日本企業が考えるM&Aのシナジー効果とプレミアム

Pocket

  

富山大学の森口教授は「実行したM&Aの評価をどのように行っているか」という判断基準についても質問しています。

その回答で最も少なかったものは「当該案件で想定したシナジー効果の達成度合いに照らして判断する」の5.0%でした。

つまり想定されたシナジー効果の達成度については、ほとんどの企業が評価の判断基準として重視していないということが理解できます。【図表】

M&A案件の目標達成度が60点以上である企業が、全体の75.6%に達しているのに、その目標達成度の評価にシナジー効果の度合いが評価されていない。

この60点という数字を、ある程度目標を達成しているレベルと考えれば、大半の日本企業はM&Aの成否を判断する際、自分たちが支払った「プレミアム」をあまり気にしていないといえるのではないでしょうか。

図表:M&Aの成否の判断基準

(出典)森口『わが国企業におけるM&Aの成否評価とPMIの実態』[2017]

  
森生明氏は、「自分が支配権を手に入れたところで、企業価値向上を実現する絵姿が描けていない会社は、他社をM&Aで買収してもあまり意味はない。そして、そこにプレミアムを支払うことは、買収対象会社の売り手株主に棚ぼた利益をもたらすだけである」と指摘しています。 (森生明『バリュエーションの教科書』(東洋経済[2016])

この点については前田氏と菊池氏は、

「企業が他の会社を買う時には、一般に30%程度のプレミアムを支払わなくてはならない。買収後に達成したシナジー効果が、旧株主に支払って流出したプレミアムの金額を上回っていなければM&Aは失敗である。なぜならば、買い手企業の株主の視点では、買収によって買収前よりも企業価値が失われている、つまり損をしているからである」と指摘しています。(前田絵里、菊池庸介『企業買収後の統合プロセス』中央経済社[2014])

筆者の経験からも、多くの日本企業は「M&Aを実行すること」が目的化していると感じられます。

買収した企業の経営陣に、以前からのやり方で経営を任せる、自分たちのミッション、ビジョン、バリューを浸透させようとしない等、欧米企業であれば考えられないようなことを、日本では上場している大企業でも行ってしまっています。

M&A後のバリューアップによって、支払ったプレミアム以上の価値を創出するということに、大半の日本企業はあまり関心がないのかもしれません。

 

⇨ M&Aのプレミアムは事業シナジーへの期待

⇦ M&Aはクローズできれば目標達成?

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です