クローズできれば目標達成?

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下記の図は、富山大学の森口教授が行ったアンケートで、M&Aの目標達成度を100点満点で評価した場合の点数を企業に聞いたものです。最も多い回答は「79~70点」の32社(26.9%)、次いで「69~60点」の25社(21.0%)となっています。成功の目安と考えられる80点以上と回答した企業は33社(27.7%)でしたが、これは、前回お伝えしたトーマツコンサルティングが調査した結果[2007年]の「3割程度」とほぼ同じ割合となりました。
 

図表:M&A案件の目標達成度

(出典)森口『わが国企業におけるM&Aの成否評価とPMIの実態』[2017]

 
ただしこのアンケートの対象は、経営企画部門、経理財務部門の役員クラスや代表取締役といった、M&Aに中心的に関わっている部署や経営陣となっています。このため、回答の「M&A案件の目標達成度」が、本当の意味で“M&Aの目標達成度”を示しているかどうかは疑問が残るところです。何故なら、これらの部署や人の仕事は、多くの場合ディールを完了させるまでであり、M&Aのクロージング後は次のディールに取り掛かるからです。

通常、経営トップや実務担当者は、M&Aの交渉を成立させるだけでかなりの労力を費やしています。このため、契約が締結されれば終わったものとして、それ以降に意識が回らないケースも多く、加えて新会社が、かたちの上で統合されて大きなトラブルもなく動いていると、統合自体が成功であったという”錯覚”に陥ってしまいます。

過去に筆者が関わったM&A案件でも、最後の最後になって理不尽とも言える条件を売り手側が出したことがありました。その条件とは、役員の退職金を数億円上乗せするというものでしたが、億単位の金額であっても、数百億円というディール金額の中にあっては誤差の範囲なのか、当事者同士もあまり揉めることなくうまく決着させることができました。

でも、考えてみるとすごい話ですよね。レベルは違いますが、サラリーマンが5千万円のマンションをローンで購入する時に、「テレビはまだ使えるけど、せっかくだから新しいのを買おう」と言って、10万円をポンと払う感覚に近いのかもしれません。この時も、最終局面に近づくにつれ、ディールをクローズさせることが責任者の最大の目的となっていたのだろうと今になって感じます。  
しかし、このような姿勢でM&Aをクローズさせると、実行後にPMIを行う責任者は苦しむことになります。この案件では私がPMIの責任者となりましたが、実際にかなり苦労しました。

日本では、M&Aを実施した企業の多くが、計画通りに買収後の経営ができていないようです。その原因の大半は、ディール成立をM&Aのゴールと思い込みかねない錯覚と、単にくっつければ終わりという統合に対する「理解不足」にあるとトーマツコンサルティングの松江氏は指摘しています。
 

⇨ 日本企業が考える「M&Aに於けるシナジーとプレミアム」

⇦ なぜ企業はM&Aを行うのか

 

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