中小企業の事業承継を取り巻く環境 ~ 中小企業が減少する理由、PEファンドの活用

ここまでのまとめ
ここまで、中小企業の事業承継を取り巻く環境について説明してきました。次の話題に移る前に、これまでの話をまとめます。
¶ 年々減少する中小企業者の約6割は売上1億円未満の企業、その内8割の企業では後継者が不在。
¶ 親族以外の事業承継は、中規模企業で30%を超えたが、小規模・個人事業者では、10%未満。
更に社外人材への承継については、中規模企業も小規模企業も10%程度でしかない。
¶ 休廃業する企業の特徴は、財務面は健全だが収益性が低いこと。
将来性がないため、利益の蓄積があるうちに事業を手じまいしたいと考える企業が多い。
¶ 企業が倒産する理由は後継者の不在ではない。
事業に将来性や収益性が乏しく、承継する価値や魅力がないから後継者が不在となる。
¶ 後継者の不在率や事業の継続意思から考えると、今後、事業者数は加速度的に減少する。
小規模事業を手間やコストを掛けずに第三者に引き継げる仕組みが必要。
¶ 事業引き継ぎ支援センターの設立によって、M&Aの活用を検討する中小企業が増加した。
しかしセンターへの相談で、実際にM&Aが成約する確率は5%程度でしかない。
¶ 事業引き継ぎ支援センターでは、相談を受けた案件は民間企業に委託することが基本。
このため、小規模なM&A案件にはほとんど対応できていない。
¶ 地方銀行に対する事業承継の相談は、事業引き継ぎ支援センターの4倍に上る。
多くの地方銀行は顧客のM&A案件を仲介会社につなぎ、成約すると紹介手数料を得る。
¶ 日本企業のM&A件数は約3,800件、米国企業のM&A数は14,500件。
企業数割合でM&Aの件数を比較すると、日本は0.22%、米国は0.25%と大きな差はない。
¶ 個人経営者数は、日本の約2百万人に対し米国は24百万人。
米国では小規模事業経営者が、WEBやビジネスブローカーを通じて事業を売買している。
¶ 2017年に米国のビジネスブローカーが取り扱ったM&Aは約1万件。
日本のM&A仲介会社であれば取り扱わないような小規模事業の売買が殆どである。
¶ WEBサイトに掲載される事業売却掲載件数は、日本最多のTRANBIが約800件。
米国には、20,000~80,000件掲載があるサイトが複数存在する。
¶ 売り手と買い手の双方から手数料を徴求するM&A仲介事業は、日本特有のシステム。
上場企業では取締役の善管注意義務を果せるファイナンシャルアドバイザ―が一般的。
中小企業では案件を成就させるため、仲介会社が両社の調整役として利用されている。
¶ 日本でも、現在WEBマッチングサイトが増加中。
小規模企業でもサイト利用で、無料や低価格で取引が可能となる基盤が出来つつある。
¶ PEファンドの投資先は、事業が成熟期に入っている中堅のオーナー企業が多い。
リターンの目安はIRRで20-30%程度である。
¶ PEファンドが提供する最大の価値は経営人材。
経営人材が、新たな視点や事業運営方法を提供してバリューアップを実現する。
¶ 経営の独立性や企業文化の承継を考え、PEファンド活用を検討する事例が増えている。
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