こんなに単純、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)の仕組み

投資先は成熟産業やオーナー企業
PE ファンドの仕組みは下記の図表の通りです。まず、運営会社がファンドを立ち上げ、機関投資家(一部個人投資家も有)から出資を募ります。ファンドの組成は、小さいのものなら 100 億円程度、大手の PE ファンドになると1件当たり 700~800 億円程度に達します。運営会社は資金を調達できれば投資先を探します。PEファンドが投資する先の多くは、成熟ステージにある業界やオーナー企業です。
投資の際、PE ファンドはリターンを大きくするために、投資先企業の資産を担保に銀行から借り入れを行います。例えばファンドが機関投資家から100億円を集めたとします。そこで80億円の企業を買収する案件があった場合、100億円のファンドから80億円を出資するのではなく、出資は30億円で、残りの50億円は、買収する企業の資産を担保に銀行から借り入れることができれば、手金(ファンドの資金)を他の案件にも使うことができます。こうした資金調達方法を LBO(レバレッジド・バイ・アウト)ローンと言います。
銀行から調達した LBO ローンによって、PEファンドは出資額を抑えることができます。出資額を抑えることができれば、その分ファンドが投資できる企業の数が増えることになります。
図表:PE ファンドの仕組み

それぞれの企業への投資期間は、一般的には 5 年間程度、最長でも10年です。この期間を基本として、PEファンドは投資企業を IPOや M&A によって売却します。この売却のことをExitと呼びます。因みに売却時のリターンの目安は IRR で 20~30%程度、これがファンドに投資している投資家の期待利回りとなります。つまり、企業価値が 10 億円の投資先であれば最低でも 5 年間で 2.5倍の25 億円程度にして Exit することを求められるわけです。
15年ほど前はExitのほとんどはIPOでしたが、今ではM&Aが多くなっています。投資期間も早ければ早いほど良いようです。私が関わっていたころは、PEファンドは、投資先のExitに際し、企業がどのような姿になれるかということに拘りを持っていましたが、今では高く売れるかどうかを最優先しているように思えます。Exitして投資回収が完了すれば、出資した投資家に配当の分配を行いファンドは解散します。
以上がPEファンドの仕組みです。仕組み自体は簡単ですが、Exitできるかどうか、更には期待した利益を上げられたかどうか等、結果を出すことは簡単ではありません。
因みに、PEファンドの責任者や担当者は投資する企業を見つけただけでは評価されません。投資した企業がExitでき、いくら儲かったかが彼らの評価となり、Exitできて初めてインセンティブ(ボーナスやストックオプションの利益)をもらうことができます。その反対に、投資した企業が倒産したり、Exitできないということが続けば、クビになることもあります。
あくまで「結果を出してナンボ」のシビアな世界です。
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