日本特有の「M&A仲介」という業態

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2018年の日本企業のM&A件数は、3,850件と過去最高を記録しました。国内企業同士のM&A、海外企業とのM&A(買収、売却)全てで、前年対比の件数、金額は増加しています。

日本企業が海外企業を買収した金額が突出していますが、これはソフトバンクグループ米国法人によるスプリント(ソフトバンクの子会社)の買収や、武田薬品工業によるシャイアーの買収が主な理由のようです。

国内企業同士のM&A金額を件数で割ると、1件当たりの平均が10億円程度と小規模な取引が多いことがわかります。国内企業同士の取引では、事業承継関連の小型M&Aの増加が、件数、金額を押し上げていると考えられます。【図表1】

図表1:日本のM&A件数推移(案件別)

(出典)レコフデータ「MARR Online」ホームページを基に作成


レコフの岩口取締役によると、現在、中堅・中小の案件で用いられているM&Aの仲介は、1974年の大丸ピーコックと神奈川のスーパー、コミーマートとの間の事業譲渡の仲介を行った山一證券が考えた“純国産”の手法が基となっているようです。

この時、同社が“日本版リーマン・テーブル”を作成して手数料を徴求し、日本のM&Aビジネスの第一号となりました。この手数料テーブルは、現在でも実務で広く使われていますが、ディールの双方から手数料を取る手法もこの時から引き継がれています。(岩口敏史 『M&Aデータから2つの市場を見る ―その発展の歴史的な考察―』MARR[2016])

フィナンシャル・アドバイザー(FA)と仲介会社の違いは、FAが売り手、又は買い手の一方の経済価値を最大化する為に存在していることに対し、M&Aの仲介は買い手と売り手間の案件成就を目的としていることです。

基本的に上場企業であれば、M&Aの際はFAを利用します。その理由は、価格や条件の妥当性(経済価値の最大化)を、取締役が株主に対して合理的に説明することができ、善管注意義務違反に問われる可能性が少なくなるからです。

FAは手数料が高額になることが多く、上場企業や大型のディールの際には利用されますが、中小企業のM&Aに利用されることはあまりありません。

中小企業の場合は、株主と取締役(経営者)が同じであることが一般的であるため、善管注意義務を果す必要がないからです。【図表2】

図表2:FAと仲介の違い

また、中小企業同士のM&Aの場合、経験の少ないコンサルタントや、場合によっては社長の知り合いがアドバイザーになることもあります。そうなると、常識から外れた価格や条件で交渉が行われる可能性があり、結果的にアドバイザーがディールを壊してしまうということも起こり得ます。

このため、M&A仲介会社の中には、双方の仲介ができない案件は引き受けないと明言している会社もあります。

しかし乍ら、売り手と買い手は利益が相反します。欧米企業やアジア企業であれば、自社の命運がかかったディールを、相手の状況も考えながら交渉をまとめるようなアドバイザーには任せません。当然、自社だけの利益を考えて動いてくれるアドバイザーを雇いたいとは思うはずです。

M&A仲介という仕組みが成り立つのは、「和を以て貴しとなす」日本だけなのかもしれません。

⇨ 鼻息が荒いM&A仲介会社

⇦ 増加するM&AによるExit~日米市場比較

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