売買数は日本の100倍 ~ 米国の巨大な小規模M&A市場

日米M&A件数の違いは、個人経営者数の違い
日米の企業数とM&Aの件数を比較すると、日本のM&A市場の活況度合いは米国と同レベルといえます。但し、日米M&A市場の最も大きな違いは、小規模法人や個人事業者のM&Aの数です。米国の個人経営者は23.8百万人であり、日本の2.1百万人と比較すると、その11倍にも及びます。
米国には、個人経営者のM&Aを取り扱うWEBサイトやビジネスブローカー[1]が数多くあり、まるで不動産売買のようにM&Aが行われています。
2018年2月26日付の The Business Journalsによると、2017年度にビジネスブローカーから報告があった米国でのM&Aの件数は9,919件でした。この件数は、2016年の7,842件と比較すると27%増加しています。
また、売却された事業の売上高の中央値は500千ドル(約55百万円)、売り手の希望売却価格の中央値は250千ドル(約27.5百万円)、実際の売却価格が228千ドル(約25百万円)と、売却価格は前年と比較して14%高くなっています。
売上高55百万円の企業といえば、日本では事業引継ぎ支援センターでも売却支援が難しい案件です。しかし、米国ではこのような小規模の企業売買が年間1万件近く行われています。この他、米国ではビジネスブローカーが介在するM&A以外に、WEBサイトでも事業が頻繁に売買されています。
米国のM&Aマッチングサイトは1990年代初めに現れ、現在では数多くのサイトが存在します。例えば、Businessforsale.comというサイトには73,169件(2019年5月7日現在)、Businessbroker.netには25,525件(同)ものM&A案件が掲載されています。
日本でも近年マッチングサイトの数が増えてきていますが、その先駆けであるTRANBI(2011年開設)が掲載するM&Aの案件は、1,037件(2019年5月7日現在)程度です。米国の2社と比較すると、100分の1程度の件数しか掲載されていません。
ビジネスブローカーやWEB上の売買を含めると、米国市場のM&A市場は日本とは比較にならないほど巨大です。日本でも今後、中小企業や個人事業主の第三者への事業承継が一般的になってくれば、M&A仲介会社が相手にしない小規模事業者のM&Aが、巨大な市場となる可能性があります。
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後半では、小規模M&Aのビジネスモデルに基づいた事業計画の作り方とその根拠を説明しています。ビジネスモデルの作り方や事業計画の策定マニュアルとしても参考になるはずです。
[1]事業売買を専門とする仲介業者で、不動産仲介と同様の流れで売り手、或いは買い手のどちらかの側について案件のマッチングから契約までを行う。
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