地方銀行はM&A仲介会社の宝箱でいいのか③~地域の未来を担う金融機関として

未来を見据え、地域の成長を支える役割を
事業承継は地方企業にとっても避けて通れない大きな課題です。しかし、最も優良な顧客を抱える地方銀行が、その情報をM&A仲介会社に提供し、成約した際の収益分配を受けることは、自らの首を絞める行為に等しいと思います。自ら汗をかかずに目先の利益だけを追うような姿勢では、地域産業を活性化することもできず、地方が益々活気を失ってしまいます。
日本バイアウト研究所の杉浦慶一氏が実施したアンケートでは、M&Aが「圧倒的にエリア内で完結する案件が多い」「どちらかといえばエリア内で完結する案件の方が多い」という回答が全体の73.1%もありました。これは、同エリア内に多くのマッチングできる先があるということでなく、地方銀行の情報が、自行のエリア内に留まっていることを示しています。
実際に、地方銀行が売買ニーズ情報を「頻繁に情報交換を行うことがある」先として他地域の地方銀行を回答した割合は6.2%しかありませんでした。この頻度をもっと増やし、地方銀行同士、或いは士業とのネットワークを構築していけば、M&Aを仲介会社に丸投げして収益のキックバックだけを受けるだけという構図から脱却することができるはずです。
銀行の現場には短期的な成果が求められることが多いのは事実です。しかし、全ての営業店が短期的な成果を追ってしまえば、 結果として顧客が抱える課題に応えていくことができずに、地方銀行の存在意義自体が問われることになります。
地方銀行に求められることは、未来を見据え、地域の成長を中長期的に支えることができるビジネスモデルの構築です。単なる預貸金業務や投資信託の販売による手数料ビジネスではなく、M&Aや事業承継、再生といった、顧客の重要課題を解決できる知識やスキルを磨ける環境を作り、社員の能力を向上させる必要があります。
今後、中小企業の事業承継はますます増加します。特に地方に於いては、銀行の役割は大変重要です。地方銀行は地域の産業を存続・発展させる使命があります。地域企業のM&Aの案件を単純に仲介会社に任せてはいけません。顧客の最も大きな課題の解決に向け、自行の地域外の金融機関や法務・税務の専門家と連携する体制を早急に構築し、情報を交換しながら顧客企業に最も適した相手を見つける努力を行わなければなりません。そのためには現場の行員が、もっと顧客を良く知り、経営者に、「税理士ではなく、まずは銀行に相談しよう」と思ってもらえるようにならなければなりません。
地方銀行は、現場の行員に投信を販売させるのでなく、もっと深く顧客とコミュニケーションを取り、経営者を知る努力をさせなければなりません。そして、それができる現場を評価する体制を作るべきだと思います。
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