地方銀行はM&A仲介会社の宝箱で良いのか②

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情報と手数料を引き換えに

地方銀行が、売買ニーズの情報交換を最も多く行う先は、M&A仲介会社のようです。大都市に拠点を置きながら地方もカバーする大手・中堅の税理士法人や税務コンサルティング会社がそれに続いています。【図表】

 

図表:地方銀行が売買ニーズ情報を交換する先

(出典)杉浦慶一「地方銀行による地域密着型金融の推進とM&A・事業承継支援業務」[2014]

 

地方銀行にとって、外部機関との連携は確かに業務に於いて有効な手段だとは思いますが、M&Aの相談受付だけを行い、あとは外部機関に委託して手数料を稼いでいるケースも散見されます。

地方銀行に於けるM&Aの取組状況に対し、 京都文教大学の野崎浩成教授は「仲介業者に頼っている限り、地銀は敵に塩を送り続けることになる」と指摘しています 。(Diamond Online 「地銀、M&A仲介ようやく本腰~企業後継者難で需要拡大」[2017])

事業承継やM&A業務は大きな収益をもたらします。しかし、顧客への高い付加価値が要求されるサービスであるため、業務を行える人材が地方銀行には限られています。また、M&Aのマッチング候補先も、地域の中だけで探そうとしてもなかなか見つかりません。

このような理由から、M&Aの実務を外部機関に委託することは、ある程度やむを得ないとは思います。

ただ、M&A仲介会社を使い続けることは“敵に塩を送り続ける”ことであり、それを続けることが地方銀行の存続危険につながる可能性があることも確かです。

庇を貸して母屋を取られる

M&A仲介会社が地域の金融機関、税理士事務所とのコネクションを持ち、メディアでの露出が増えるに従って、企業が大手のM&A仲介会社に直接コンタクトするようになっています。

M&A仲介会社は、これまで地方銀行から顧客を紹介してもらい、その見返りとして手数料の20%程度を銀行にキックバックしていました。しかし、顧客から仲介会社に直接話が来るようになれば、その必要もなくなります。

実際に、M&A仲介会社の経営者に話を聞くと、もはや大手のM&A仲介会社は案件が多すぎて対応する社員が足りない状況になっているようです。

このため、彼らは高い手数料が取れる簡単な案件を優先しており、時間が掛かったり、20%の紹介手数料を払う必要がある地方銀行の案件は、後回しにされてしまっています。

企業からのM&Aの相談を、銀行がM&A仲介会社に繋いでも、仲介会社が動かなければ候補先は見つかりません。そこで「銀行に相談しても一向に候補先を紹介してくれない」と不満を持った企業が、直接M&A仲介会社に話を持ち込む。そんな構図に変わりつつあります。

今や地上波のTVでもM&A仲介会社のCMを見かけるようになり、M&A仲介会社の認知度は社会的にかなり向上しています。

M&A仲介会社が直接銀行の顧客とコンタクトする流れが続くと、従来は地方銀行だけが持っていた顧客のさまざまな経営情報が、M&A仲介会社に流れるようになってしまいます。

地方銀行はM&A仲介会社の宝箱で良いのか①でも指摘した通り、M&A業務を全て自行で行える地方銀行は全体のわずか6%しかありません。いつまでも目先の収益だけに囚われて状況を放置すると、大きな収益源であるM&A業務が全てM&A仲介会社に持ち込まれたり、銀行が単なる仲介会社の下請けになってしまう可能性があります。

M&A業務は地方銀行が自ら行うべき

この流れを断ち切るために、地方銀行は、他地域の銀行やメガバンクと提携してM&Aのノウハウを早急に取り入れるべきです。M&A仲介業務で最も大変なことは、ストラクチャーの構成や税務面や法務面ではありません。

どのように経営者のニーズを聞き出し、相手を探し、面談のセッティングに持ち込むかです。

特に地方企業の場合は、買収したい先や売却したい相手を経営者が決めていることが少なくありません。経営者も「あの会長ならうちの社員を安心して任せられる」とか「あの社長はうちの事業に興味があるはず」等の感触を、日ごろの取引やさまざまなネットワークを通じて持っています。

銀行が、事業の将来や後継者について、経営者の考えをしっかりと聞き出すことができていれば、あとは経営者同士でとんとん拍子で進む案件も多いはずです。

M&Aというと、話の進め方がわからないとか、何となく税務面や法務面で詰めなければならないところが多く、難しそうと思うかもしれません。しかし実際にデューデリジェンス等は、M&Aの最後の局面で行う「作業」に過ぎません。スキームを組み立てることができないような難しい案件は、その部分だけ提携したメガバンクやコンサルティング会社に支援してもらえば良いのです。

法務や税務に関しても、専門の弁護士や税理士の力を借りれば問題はありません。これはM&A仲介会社であっても同じです。弁護士や税理士の資格なしに具体的な法務や税務のアドバイスをすることはできません。

そんなことよりも、将来に悩んでいる企業の経営者と、事業のシナジーや相性が良さそうな相手を探し、トップ同士の面談をセッティングすることの方が100倍も大事です。そこで意気投合して企業から「意向表明書」をもらえるかどうか、それこそがM&A仲介会社の1番の仕事です。

意向表明書をもらえれば、M&Aは8割成功です。あとは基本合意契約書を締結し、最後に確認の意味でデューデリジェンスを行います。

地方では、前述の通りM&Aの相手候補を経営者が具体的に頭の中で持っていることもあります。地方企業同士のM&Aは、相手を一から探してこなければならないサーチ(事業や相性が合いそうな企業を探す作業)が必要ではないことも多いのです。

その点を地方銀行が理解していれば、M&A仲介会社に依頼せず、自社がアレンジすることはそれほど難しくありません。地元の企業のトップと最も親しいのはM&A仲介会社ではなく、地元銀行のはずですから。

地方銀行が、地元の企業同士をつなぎ、地域の発展に貢献するという役割を放棄するのであれば、地域に存在する意味はありません。銀行が地域で成し遂げるべき役割は今後さらに重要になります。

 

⇨ 地方銀行はM&A仲介会社の宝箱で良いのか③

⇦ 地方銀行はM&A仲介会社の宝箱で良いのか①

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