マッチング率「1割未満」の事業引き継ぎ支援センター

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結局は民間のM&A仲介会社に依頼する

事業引き継ぎ支援センターの取組に戻ります。2018年1~3月期の事業引き継ぎ支援センターへの相談件数は、前年同期比1.7倍と大幅に増加しました。しかし事事業引き継ぎ支援センターに相談する経営者は、公認会計士や税理士といった顧問のような専門家に相談する数と比較すると、まだまだ圧倒的に少ないのが実情です。

下の図は、全国の事業引き継ぎ支援センターの設立以降の相談者数と成約数実績です。2011年度に設立された同センターへの相談件数は年々増加しており、2017年度は8,526件、累計相談数は25,515件に上っています。しかしこれらの相談件数の内、成約した引継ぎ件数は2017年で687件でしかありませんでした。相談件数は増えてきているものの、実際に相談された案件の殆どは、解決されない状況になっているのが実情です。なぜこんなにマッチング率が低いのでしょうか?

 

図表:2017年度事業引き継ぎ支援センターの取組実績(全国)

(出典)中小企業基盤整備機構「事業承継に関する最新動向について」[2018年]

 

その理由は、まず事業引継ぎ支援センターが自らM&Aの相手先を見つけることができないため、結局は民間のM&A仲介会社に仲介を依頼する取次しかしていないこと、そして、民間のM&A仲介会社の手数料が非常に高額になることの2つがあげられます。

M&Aが成約すれば、企業は仲介会社に高額な手数料を支払わなければなりません。手数料には最低金額があり、例えば、経営者が自分の企業を2,000万円で売却できたとしても、仲介会社のM&A手数料の最低金額が2,000万円であれば、経営者の手元には1銭もお金が残らないこととなってしまいます。このため小規模企業の経営者は、M&Aの相手を探すより、廃業を選ぶか、事業引継ぎ支援センターのような公的機関に依頼するしかありません。

しかし、事業引継ぎ支援センターが、小規模事業者の案件を受け付けても、センターはその企業を買ってくれる企業を候補先としてリストアップしていません。このため、結局売却先が見つかりそうな案件はM&A仲介企業へ紹介し、それ以外の案件、つまり売却金額があまりにも小さい案件は、センターのリストに載せられて塩漬けになってしまいます。この結果、事業引継ぎ支援センターのマッチング率は1割未満という状況になってしまうわけです。

 

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