事業承継対策に対する期待の高まりと公的機関の取組

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事業承継は最近になって問題視されてきたわけではありません。15年前の中小企業白書2003年版では「約3割の経営者が自分の代での廃業を考えており、その理由として業績不振が多数を占める」として、事業を継続しない経営者の問題が採り上げられています。

また、その上で「経営者が年齢、後継者難、その他の個人的理由や受注の減少等により、事業継続意思を失っている場合の円滑な退出の方法として、事業を他の企業に譲渡することが有効」として、M&Aによる第三者への事業売却を検討すべきとも説いています

その3年後の2006年には、中小企業基盤整備機構が『事業承継ガイドライン20問20答』という事業承継のマニュアルを作成し、経営者の平均年齢の高齢化や、年間29万社の廃業のうち後継者不在を理由とした廃業が7万社にも上っている点を指摘しています。

当時の中小企業経営者の平均年齢は57歳ですが、マニュアルに記載されている内容は、税制面を除いて「平成30年度版 事業承継支援マニュアル」(中小企業基盤整備機構[2006年])とほぼ変わりません。

中小企業基盤整備機構は、2005年10月、中小企業における事業承継の重要性を考え、事業承継の円滑化を図るための検討や具体的な政策を実行するために、事業承継協議会を設立しました。また同機構は「事業継続ファンド」を設立し、中小企業の事業承継を支援しています。

更に、2011年度からは、後継者不在に悩む中小企業・小規模事業者に対して、第三者への事業承継を支援するため、各都道府県に事業引継ぎ相談窓口及び事業引継ぎ支援センターを設置しました。

この事業承継引継ぎ支援センターでは、後継者不在の小規模事業者と起業家をマッチングする「後継者人材バンク事業」を2014年度から開始しています。

2018年度の税制改正では、経営承継円滑化法における事業承継税制の改正が行われ、後継者が贈与や相続により取得した株式等にかかる納税が100%猶予される制度ができました。

これまでの措置(「一般措置」)に加え、10年間の措置として、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の最大3分の2まで)の撤廃や、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)等がされた特例措置が創設されています。

事業資産の承継の一番の課題である相続税、贈与税が100%猶予・免除可能となるこれらの措置は、中小企業経営者の事業引き継ぎにプラスに働くと考えられています。【図表1】

図表1:事業承継税制の特例措置と従来の一般措置との比較

(出典)中小企業庁「経営承継円滑化法申請マニュアル」[2018年]

このような取り組みを背景に、2018年は、事業承継をキーワードとする新聞記事検索件数やGoogleでの検索件数が急増。同期間の事業引き継ぎ支援センターへの相談件数は前年同期と比較して1.7倍に伸びる等、事業承継に対する世間の関心の高まりを感じます。【図表2】

図表2:事業承継に対する関心の高まり

(出典)中小企業基盤整備機構「事業承継に関する最新動向について」[2018]

 小規模M&A市場の活性化が期待される事業引き継ぎ支援センター

 事業承継に必要なのは後継者探しではない

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