中小企業の事業承継が注目される理由~廃業意向調査から見る小規模・中小企業の課題

今に始まった話ではない
中小企業の事業承継問題がクローズアップされています。引き継ぐ人がいないため、企業が休業や廃業を余儀なくされる状況は、最近になって急に増えてきたのでしょうか?実は、休廃業によって事業が承継されないという問題は、今に始まったことではありません。15年前の中小企業白書2003年版の調査[1]では、自分の代で廃業を考えている経営者は全体の27.6%にも達していました。
その理由は下記の通りです【図表1】
①「業績が不振である」 38.0%
② 「経営を承継する適当な人がいない」 29.0%
③ 「当初から自分の代で事業を辞めるつもりだった」23.3%
図表1:2002年時点での「事業継続意思と事業継続を希望しない理由」

(出典)中小企業白書[2003]
これらの企業は、小規模であるほど事業継続の意思が弱く、従業員5名以下の企業では半数以上が自分の代で事業を辞めたいと考えていました。【図表2】
図表2:2002年時点での「従業員規模と事業継続意思の関係」

(出典)中小企業白書[2003]
次に、2016年に実施された、組織形態(中規模法人・小規模法人・個人事業者)別の廃業意向調査[2]を見てみましょう。【図表3】
廃業の意向は、個人事業者で最も高く26.0%、小規模法人が7.9%と、事業が小さくなるほど廃業意向を持つ割合が高くなっています。「未定である」まで含めると、個人事業者は半数以上、小規模法人でも4割強が事業を継続するかどうか決めていないことがわかります。
個人事業者は企業全体の半数超を占め、従業員9人以下の企業まで入れるとその割合は、全体の8割以上を占めます。
2002年の調査では、従業員規模が5人以下の企業の経営者の内、54.0%が自分の代で事業を辞めたいと答えていました。当時の経営者のピーク年齢は55歳前後ですから、これらの経営者は現在72歳前後になっているはずです。この数字を見る限り、何もしなければ、今後個人事業者や小規模法人の数は加速度的に減少していくと考えられます。
図表3:組織形態別にみた廃業の意向

(出典)中小企業白書[2017]
[1] 「事業承継に関する実態調査」2002年12月に財団法人中小企業総合研究機構が財団法人 大田区産業振興協会と東大阪商工会議所の協力を得て行った調査
[2]中小企業庁委託「企業経営の継続に関するアンケート調査」(2016年11月、(株)東京商工リサーチ) 中小企業白書2017年版「廃業意向あり」とは、「誰かに引き継ぐことは考えていない(自分の代で廃業するつもりだ)」と回答した者。「廃業意向なし」とは、「誰かに引き継ぎたいと考えている(事業の譲渡や売却も含む)」回答した者。
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